源氏絵
柳亭種彦の小説は、19世紀の浮世絵の全く新しい分野ができるきっかけとなった。柳亭の『偐(にせ)紫田舎源氏』は1829年から1842年の間に出版された未完の長編小説で、将軍の側室の子、光氏(みつうじ)の好色遍歴の話。11世紀の紫式部の『源氏物語」を下敷きにしている。世界最古の小説といわれる日本の古典『源氏物語』は、光源氏を主人公にした恋愛小説であった。源氏絵の特徴は人物のみならず衣服、庭園、室内が非常に表現力豊かに描写されていることである。
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源氏絵の浮世絵師
柳亭種彦の小説『偐(にせ)紫田舎源氏』シリーズは、有名な浮世絵師、歌川国貞の挿絵とともに出版され絶大な人気を誇った。そのため1838年から国貞はこの物語に基づいた個別の浮世絵版画の図案も作成した。ファン・ゴッホは画商ビングの店の在庫からこの浮世絵を選んでコレクションに加えた。
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至るところに源氏あり
『偐紫田舎源氏』の人気は絶大で、物語の中の一節、一要素がまったくほかの分野で取り上げられることさえあった。広重は彼の東海道五十三次の37番目にこの物語の場面を用いた。当時の日本では現実と文学世界のこうした融合を即座に認識することができた。